言葉の持つしっぽ(あるいは亡霊)について/白糸雅樹
 
きないし、ヴェポラップに性的な愛着を抱き咳き込んでいるこいびとの胸と背中にぬりたくるのは、いいだありこの歌でヴェポラップの存在を知ったからだ。これは多分に個人的なもので、塚本の歌に比べれば一般性は低いが、しかし私の中には存在している。そしておそらく、私がそれらの歌を読んだ「かばん」を同時期に読んでいた人たちもそれを、共有してくれている、と、思う。

 「ぐらぐらしますね ぐらぐらします」といえば、直接的に「真剣ですよ」というより真剣な時だ。

 「夜中に台所で僕は君に」と言えば、性的なものを含めた深い愛情に裏打ちされたものが否応なしに押し寄せてくる。

 それに気づいた初期の頃は、なん
[次のページ]
戻る   Point(4)