ピラニア/「Y」
 
はわけもなくベッドから降り、電灯を点けて水槽に近づいた。
 その時、僕は実際には眠っていたのだと思う。だが、ピラニアのいた水槽を眺めていたときの記憶、そして、僕の目に映っていた水槽の佇まいは、妙に生々しいものだった。夢の中の水槽はなみなみと水を湛え、ピラニアは水槽のちょうど中央部にとどまっていた。それはまるで凍り付いてしまったかのように、水の中で完全に静止していた。僕はピラニアを凝視した。ピラニアは僕の視線に反応し、水中で震えるように身を躍らせた。光の加減か、鱗が暗緑色の光を発した。しかしその光の揺れは、すぐに鎮まった。再び部屋の中に静寂が訪れた。時間が止まってしまったみたいだった。
「ねえ。
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