ピラニア/「Y」
 
とれているだけでは済まなくなった。第一、何が美しくて何が美しくないかが、僕には分からなくなった。いや、今の僕は、美しいものと醜いものとはひと繋がりに結びついていると思っている。それもこのピラニアに教えられたことなのだ。あまりにも口数が増えすぎたピラニアに、僕は胸苦しさを覚えるようになっていった。その苦しさがはっきりとした苦痛に姿を変えたとき、僕はピラニアを手放すことに決めたのだ。


 僕はベッドに仰向けになったまま天井を眺めていた。今ではサーモスタットの音もなく、完全と思われる無音が闇を覆っていた。僕は体をひねってヘッドレストに置かれた目覚まし時計の蛍光針を見た。午前三時すぎだった。僕はわ
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