ピラニア/「Y」
 
に佇み、覗き込むようにして僕の顔を凝視していた彼の顔が脳裏に浮かんだ。
 気が付くと、僕は声をあげて泣いていた。どれほど抑えようとしても泣き声が出るのを止めることができなかった。僕は嗚咽をおしころすために、腕を口元にきつく押し付けながら泣いた。

 明の死を知った頃から、僕の心は、急速にピラニアから遠ざかっていった。その理由を、僕はうまく説明することができない。直接言葉を交わすことはできないけれど、ピラニアは僕に向かって様々なことを語りかけてくるようになっていった。そして、明の死後、ピラニアは今まで以上に饒舌になっていったと思う。最初はただ美しかっただけに思えたピラニアも、今では、ただ見とれ
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