ピラニア/「Y」
 
 明は既に、荼毘に付された後だった。
 明の死因を、その手紙の文面から窺い知ることは出来なかったが、僕は、彼が長いこと患っていた心臓の病が彼の命を奪ったのに違いないと確信していた。
 週末、僕は新幹線で長野へ向かった。
 窓外に目をやりながら、僕は明と知り合ってからの明とのやり取りを思いおこしていた。
 不意に、彼が引越しをする直前、僕に蝶の標本を手渡した明の顔が浮かんだ。あのときの明の顔の色の白さが、僕の中で、閃光のように煌めきながら彼の死と結びついたように思えた。同時に、僕の心の中に得体の知れない曇った感情が湧き起こった。その感情はあっという間にその嵩を増して、僕の中に重くわだかまった
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