ピラニア/「Y」
 
厖大な時間が宙に浮いた。たがの緩んだような生活が何週間か続いた。水槽の中のピラニアを眺めている時間が長くなった。だが、それも一時的なことだった。中学校に入学して通学時間も長くなり、僕は今まで以上に忙しくなった。明と別れてから、彼からは何の音沙汰も無かった。僕は長野にある明の家に何度か電話をしてみた。しかし、誰も電話には出なかった。
 明の死を報せる手紙が僕の家に届いたのは、今年の秋のことだった。学校から帰宅してポストの郵便物を取り出した後、差出人の住所と苗字から、それが明の家からのものであることに気付くまでに、さほど時間はかからなかった。僕は駆け込むように自室に入り、自室に閉じこもった。
 明
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