ピラニア/「Y」
 
あるけれど、隆に話したかったことを伝えることが出来て、何だかほっとしている。
 君がこの蝶をときおり眺めて僕のことを思い出してくれれば、僕にとってこれほど幸せなことはない。……それでは、さようなら *** 明より〉
 明からの手紙を読み終えた後、僕は気が抜けたようになったまま、ぼんやりと座っていた。しばらく経って我に返った僕は、標本の入った木箱を開けて中を見た。モンシロチョウの羽の輝きが眩しく感じられた。僕は目を閉じた。闇の奥に、白い光がぼうっと浮かび上がって見えた。

 合格したことによって、日常生活の何かがことさら変化したというわけではなかった。これまで受験勉強のために確保してきた厖大
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