ピラニア/「Y」
 
るようにと、医師や両親から言われていたんだ。勉強のほうは、家庭教師を呼んでいたので何とかなった。勉強をしていないときは、標本室で過ごすことが多かった。本を読むように、蝶を眺める癖がついた。蝶の名を憶え、その姿を心に刻み付けていく作業に、僕は没頭した。蝶の存在は、不思議と僕の心を落ち着かせた。
 やがて僕は、標本箱を眺めているだけでは飽き足らなくなって、捕虫網を携えて外に出るようになった。医者から安静を言い渡されている僕の身体にとって、蝶を採取するために野を出歩くことは、とても危険なことだった。だけどそのことが、逆に僕を外へと駆り立てることになった。それに、僕は自分が近いうちに死ぬんだろうと思い込
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