ピラニア/「Y」
 
とも無いような真剣なものだった。僕は張り詰めるような明の視線に耐え切れなくなり、
「あんまり、おっかない目で見るなよ」
 と言った。
 明の視線がふっと緩んだ。一瞬、呆けたような表情を見せた後、明は乾いた笑顔を僕に向けてつくった。そし て、呟くように言った。
「忘れないように、と思ってさ」
 明が帰った後、僕はすぐに明からの手紙を読んだ。それは6枚の便箋に、小さく几帳面な字で丁寧に書き綴られていた。
《隆へ *** 僕が病気がちで、小学校での学年が二年遅れになってしまっていることは、隆にはもう言っただろう? 僕は、先天性の心臓疾患を患っていた。学校を休んでいるあいだ、家の中で静養するよ
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