ピラニア/「Y」
第一志望の中学校一つだけを受験した。そして、僕も明も、受験した学校全てに合格することができた。私立中学を受験した生徒は僕の周囲にも何人かいたが、合否の結果が表立って取りざたされることは無かった。
それから何日か経って、明が僕の家に来た。彼は小さな木箱を大事そうに抱えていた。庭先に立ったまま動こうとしない明に向かって、家の中に入るように促すと、明は、いろいろと忙しいからここでいいと答えた。僕はその時、明の顔色が、ひどく蒼白い事に気付いた。
「なあ、すごく顔色が悪いよ。具合が悪いんじゃないのか」
血の気を失い、蝋のようになってしまっている明の顔を見ながら、僕はおそるおそる訊ねた。明は、大
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