ピラニア/「Y」
た僕は、自転車に乗って、自宅から二十分ほどのところにある彼の家に向かった。明の部屋は八畳間だったが、その空間の多くが蝶の標本によって占拠されていることが、僕を驚かせた。
「もともとは、僕の父が作った標本を置くために、部屋の一部を貸していた。だけどそれがいつの間にか、僕の趣味にもなってしまっていたんだ。今は勉強の合間の気分転換に、パソコンを使ってデータベースを作っている」
そう言った後ですこし考え、
「いや、もう気分転換とは言えないところまで、のめり込んでしまったな」
と呟くように言った。
「なにしろ、この時期になってもいまだに採集なんかにも行っているからね。他県に遠征したりとか」
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