ピラニア/「Y」
 

「美味しいか」
 僕はピラニアに話しかけた。ピラニアは明澄であるのと同時にうつろな目を見開きながら、ゆったりと泳いでいた。僕は大きくなるにつれ渋みを増してきたピラニアの鱗や、鰓から腹にかけての紅色が光るさまを、長いこと見詰めていた。

 都内の私立中学を受験するための勉強を僕がはじめたのは、小学五年生の冬休みからだ。僕が目指したのは、大学までの一貫教育を行っている学校だった。成績さえよければ高校と大学への受験勉強を免責されるシステムに魅力を覚えた僕は、自分の希望を両親に相談した。両親は、僕がその学校を目指す事に賛成してくれた。僕は駅前にある進学塾に通い始めた。
 僕が明と知り合いにな
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