ピラニア/「Y」
た。あの時、昼間は誰も家に居ないのに、どうやって犬の世話をするのかと問うてきた両親に、僕は何も言い返すことが出来なかった。僕は両親の言い分はもっともだと思うと同時に、言葉でうまく言い表すことのできない理不尽な仕打ちを、何者かから受けたような苦い思いも味わった。僕は、つい今しがた自分がこの手で抱いたマルチーズが、今は一体どこに居るのだろうとわけもなく思った。僕が犬を飼うことができないのと同様に、あのマルチーズも飼い主を選ぶことができない。一見当たり前のようにも思えるそんなことが、不意に、とても不可思議なことのように思えてきた。
家に戻ってコンビニから買ってきたものを母に渡した僕は、ピラニアの様子
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