ピラニア/「Y」
魚店から姿を消した。
水槽の中の、体長15センチ足らずの稚魚の身体の色は、熱帯魚店で見た成魚に比べ、より銀色に近かった。僕は、金髪の店員が言っていた、ピラニアは意外と神経質で臆病な魚だという言葉をしばしば思い出した。だが、すくなくとも僕は、自分が飼っているピラニアに対してそのようなことを感じたことは一度も無かった。その頃はメダカと、クリルという名称の、エビを乾燥させた人口飼料を餌として与えていたが、ピラニアは、僕が水槽の前で見ていることなどお構いなしに、常に旺盛な食欲で餌を平らげた。
ある日僕は、母に頼まれて近所のコンビニに買い物に行った。コンビニの入り口のところに一匹のマルチーズがつなが
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