ピラニア/「Y」
 

「ちゃんと飼えるの? 途中で投げ出したりしちゃ駄目よ」
 と言っただけだった。
 父の帰宅はその晩も遅かった。

 ピラニアを飼うようになってから僕の生活は変わった。学校の授業の最中にも、授業が終わって家に帰るまでのあいだも、心の片隅でピラニアのことを考えていた。今までは途切れ途切れに流れていた時間が、僕の部屋に置かれている90センチの水槽を中心にしてひとつに繋がった。僕の部屋に置いてある水槽の中で泳いでいるのは、三社祭のあった日に見た成魚ではなかった。店員の勧めもあって、結局僕が手に入れたのは稚魚だった。僕を夢中にさせたあの成魚は、僕が稚魚を手に入れた一週間後に売れて、その熱帯魚店
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