ピラニア/「Y」
話しているのだろう、父の声は、籠もった雑音を交じらせていた。
電話でのやりとりはすぐに終わった。仕事が忙しい父との関係は、ひどくあっさりしている。父は週末には家にいるが、町内の草野球での試合には毎週出ているし、僕のほうでも進学塾でのテストなどがあるから、触れ合う時間はさほど多くない。
セレモニーホールで働いている母が家に帰ってくるのは、大抵夜の七時頃だ。ピラニアを飼いたいという話を持ちかけるのは、夕食が済んで寛いでいる時にしようと決めていた。既に父からの了解をとっているので、気分的には大分楽だった。結局僕は、母と二人きりの夕食を終えたあと、あっさり母の了解を取り付けることができた。母は、
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