ピラニア/「Y」
 
飼うこと以外は眼中に無い状態になっている、ということにようやく気が付き、僕は心の中で苦笑した。僕は店員にうまく乗せられたように思い、そのことが少し癪だったが、同時に、ピラニアについて色々な事を教えてくれたことに、好意を感じてもいた。
 僕は家に帰った後、父の携帯に電話をかけ、ピラニアを飼う事にする、と言った。僕の父は、週末以外は会社での仕事が忙しいので、平日に連絡を取り合う場合は携帯を使うしかない。父は会社で仕事をしている最中だった。慌しげに紙を擦る音、複数の人の話し声が受話器の向こうから聞こえてきた。
「そうか、やっぱり飼うのか。いいんじゃないか」
 肩と首のあいだに受話器を挟みながら話し
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