小詩集【ルナ区の片隅で少年少女は】/千波 一也
{引用=
一、斜塔
あの塔は
いつ崩れても
おかしくはない
と
その
語りは
誰かにとって
あたらしきを築き
誰かにとって
もはや
壊れたままのかけらで
見えないはずの
ことばのかたちは
日々を
平等に
取り囲んでいる
そうして斜塔は
アンバランスという名の
均衡のなかで
きょうも静かに
立っている
ここは
バランスに
明け暮れる者たちの
不均衡な地平
たとえば月の名に
たとえば星の名に
誰かにとっての
故郷の定義が
変わりゆく
そんな事態もあるだろう
そういう地平に
ひとは棲んでいる
そうして斜塔は
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(19)