空へ空へ。/渕崎。
 
ンスが一枚。
僕と彼女は顔を見合わせて笑った。

――死後の世界に興味はなぁい?
――死後の世界にゃ興味はないけど、こっちの世界には飽きたかな。
――じゃぁ、読みへの旅路なんて一緒にいかが?
――遺書くらい書くべきか?
――前略、お父様お母様。先立つ不幸をお許しください、って?
――は、馬鹿馬鹿しい。
――で、どうする?

彼女は僕のコートに勝手に突っ込んできた手を僕の手に絡ませて、今日はフランとムースポッキーどっちを食べる?くらいの気安さで訊いてきたから、僕は笑って錆びたフェンスに足をかけた。
見上げた空はどんより曇って灰色で、柄にもなくこの雲の上へと
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