空へ空へ。/渕崎。
うでもよかった。
宗教観の薄い日本で生まれ育った僕には神の存在は希薄だったし、天国やら地獄やら極楽やら死後の世界やらはとんと無縁な話だ。坊主の経が長くて法事の際にやたら退屈するくらいで。
――ねぇ、死んだらどうなると思う?
――葬式挙げられて火葬場で焼かれて骨と灰になって骨壷にIN。
――……夢がないね。
――死期に夢見てどうするわけ?
――どうもしないけど。
彼女は寒いらしくマフラーに顔を埋めてもごもごと喋っていて、僕もコートのポケットに手を突っ込んで寒さを凌いでいた。
目の前には錆びたフェンス。
簡単に登り切れてしまいそうな、そんなちゃっちいフェンス
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