「幸せの花束」〜奥主榮・白糸雅樹さん結婚の日に〜/服部 剛
紫色の両手を包むように
祈っている
一週間前
十年目の命日を迎えた
作家のE先生を「偲ぶ会」で
余った花を束にして
持ち帰ったりんどうは
僕が結婚式に出かけて行く時
ドアを開いて振り返ると
嬉しそうに祈りの花びらを少し開いていた
今頃
E先生の奥様は
福島の空の下で講演をしているだろう
今朝
「親父が倒れた」というメールをくれた
両手両足が動かない障害者の詩友は
今頃
西東京の自宅でヘルパーに介護されながら
入院している父を想い
思案に暮れているだろう
今夜
かつて想いをよせたあの女(ひと)は
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