「幸せの花束」〜奥主榮・白糸雅樹さん結婚の日に〜/服部 剛
は
嫁いだ広島の空の下で
夫の為に厨房に立ち
まな板の上、野菜を刻む音を立てるのだろう
それら全ての人々に
僕は何ができるでもなく
只 東京行きの東海道線に揺られて
瞳を閉じる
( 暗闇に浮かぶ 紫の祈りの花 )
*
「 まもなく東京、東京でございます 」
向かいの席の女と
ビニール袋の水槽の中で泳いでいた金魚の姿はすでに無く
腰を上げた僕はブラインドを上げると
車窓の外はいくつものホームが並ぶ東京駅
中央線へと乗り換える
長いエスカレーターのトンネルで
上へと移動する行列に並びながら
二度と戻らない「今日という日」を想う
薄明かりのらんぷが灯るカレー屋で
新郎新婦に贈る
小さい花束を手に
戻る 編 削 Point(7)