歯車/海月
 
少し深い森を抜けると小屋が一つある
表札は流れた月日を感じさせる
窓枠から屋根に向かい草木の蔓が伸びて
何年も掃除をしていないのだろう

もう、誰も住んでいないだろう
とボロボロのドアノブに手をかけた
偶然にも廻る
それは歯車が動き出した合図だった

埃だらけの部屋には人の気配はなかった
暗い部屋の中で瞳が見つけた
服を着たまま彼(ほね)が椅子に座ってこちらをみている
それは誰かを待っているかの様に

軋む床に恐怖心を覚えながらも近づく
膝にはカーデガンが掛かっていて
足はスリッパを履いていて
本当に今にも動きそうに座っている

彼は何を待って扉を見て
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