歯車/
海月
見ていたのだろう
足元には茶色に変色した紙切れ
さようなら。
捜さないで下さい。
彼は妻を待って扉を見ていたのだろう
彼の願いは叶わず
僕がこの小屋を後にしたら
老婆に出会った
僕は呟くように言葉を零した
彼は今も元気に貴方の事を待っています
老婆は「よかった」と呟き
永い眠りについた
歯車は静かに止まった
次の人がドアを開けてくれるまで
動き出す事はない
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