他部族の踊り子/緑茶塵
よけて、外の景色を眺める。
「冷えるな。早く戻った方がいい」
彼女は振り返ると皮袋に酒を注ぎ足した。
「もう少し飲みしょう。外がいいわ」
「あんた物好きだな。この寒い夜中に」
「いいじゃない。それに付き合うあなただって、相当な変わり者よ」
彼女は身体を俺に預けて、小さくなって寝そべっていた。
藍で染めた外套を頭から被り、だから俺から彼女の顔はまったく見えなかった。
「寒いわね」
「そりゃ寒いさ」
「お酒飲む?」
彼女が皮袋を差し出したので、俺は杯にそれを受けた。
どちらも無言だった。夜の静寂が心地よかった。
ふと馬の嘶く声がした。
「誰かしら?」
彼女が顔を上げて
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