他部族の踊り子/緑茶塵
 
踊りの最中に席を立つ人なんて、いないのよ。あなたがはじめてみたいなものよ」
「そうだろうな」
俺は彼女の踊りを思い出して、杯が空になるまで酒をあおる。おそらく今夜は寝れそうにないだろう。
「早く行け。待ってる奴がまちくたびれるだろう」
彼女は酒の入った空袋を差し出した。俺が彼女の顔を見返すと、彼女は笑いながら逆手を使って杯を差し出させた。
杯に、皮袋から酒が注がれていく。
「のんで」
俺は杯に口をつける。
彼女は俺の横に座り、頭を俺の肩に預けた。
「町に行った事はある?」
「ないさ」
「そう。きっとそうだと思った」
「なんでだい?」
「あなたは、他の人と違うみたいだから」
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