他部族の踊り子/緑茶塵
「赤い方が似合っている」
「え?」
「口紅さ」
俺は自分の唇に指を当て、紅をひく真似をする。
「酔ってるの?顔が赤いわ」
彼女は俺に近づくと、俺の顔をじっくりと観察する。
彼女の虹彩は、不思議な蒼色で染められていた。
そして良い匂いがした。
「いい香りだな。まるで草原の中にいるようだ」
「香水よ。今日のために町で買ったのよ」
高いのよ。そう言って笑った。
おそらく俺の稼ぎでは一生働いても手に入らない、香水の値段など知らないが、何故かそんな気がした。
「ねえ、あなた私の踊りの途中で出て行った人じゃない?」
「ああ、そうだ。よくわかったな」
「自慢じゃないけど私の踊り
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