社会の一つとして個人を見てしまうあなたへの手紙/I.Yamaguchi
 
りません。
確か、四百勝した金田もそうだった記憶があります。

ところで、最近になって知ったのですが、
私は何かが終わるのを見たことがありません。
卒業によって疎遠になった友達
一年も前から行き詰まりを感じていたのに
ずるずる続ける内に別の男に走った女
妹の誕生日だからといって
お見舞いに行きそびれた晩に死んだ祖父

失ったいった人たちは確かにいるのですが
けんかをしたり、息がなくなるのを
目の当たりにしたことはありません。
人だけではありません
ずいぶん昔クモの巣に
蟻をくっつけて死ぬざまを見ようとしたときも
クモは私から与えられた役割を黙々と果たすために

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