はじめの一歩 〜鎌倉の寺にて〜/服部 剛
 
北鎌倉の山寺の
境内(けいだい)を歩くと 
左手に緑色の池が現れた 

小石を一つ拾い 
池へ投げる 

緑の水面(みなも)の真ん中に 
水の花が開いて 
広がる 
 
( いつの日か花開く夢の序章は
( 小石を投げることから始まる  

  *

境内の茶室に坐り
瞳を閉じる 

目の前は
高い谷間に架かる長い吊り橋の袂(たもと)

決意の小さい一歩を踏み出そうと 
大きく息を吸い込む 

「夢の御国(みくに)」は
風に揺れる吊り橋の彼方(かなた) 
橋の真ん中を無邪気な少年の幻が
楽しげに駆け抜けてゆく 

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