はじめの一歩 〜鎌倉の寺にて〜/服部 剛
北鎌倉の山寺の
境内(けいだい)を歩くと
左手に緑色の池が現れた
小石を一つ拾い
池へ投げる
緑の水面(みなも)の真ん中に
水の花が開いて
広がる
( いつの日か花開く夢の序章は
( 小石を投げることから始まる
*
境内の茶室に坐り
瞳を閉じる
目の前は
高い谷間に架かる長い吊り橋の袂(たもと)
決意の小さい一歩を踏み出そうと
大きく息を吸い込む
「夢の御国(みくに)」は
風に揺れる吊り橋の彼方(かなた)
橋の真ん中を無邪気な少年の幻が
楽しげに駆け抜けてゆく
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)