fractal/あやさめ
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「また、ずいぶんややこしい台本になったもんだね。」
「それは仕方がないことだ。全ての記号は外に開かれつつ、それ自体が重層的でありうる存在だからね。
そうして作られた物語は須らくメタ的な構造を持っているのだけれども、あまりそれを意識的に使う人は少ない。
このような使い方を『意図的に』行わないと、作品のメタ的な入れ子の構造を意識するのは難しい。
ただ、それ自体の存在を指摘することはいろんな作品においてできることなんだ。」
「例えば?」
「そうだね、例として宮沢賢治の『小岩井農場』を挙げてみよう。この作品は、語り手の一人称で最後まで進ん
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