その2俳句の非ジョーシキ/佐々宝砂
る省略は、さらに「花疲れ」(花見で疲れること)、「花衣」(花見のとき着る服)、「花曇」(花見のころの曇りがちな天気)などの言葉を生んだ。俳句の世界でしか通用しない言葉ではあるが、この手の言葉を使えば、短いなかに複雑な気持ちをこめられる。
俳句の決まり事が生まれた理由は、ただひたすら、俳句が短いからだ。なにしろ十七音。余分なことは書けない。できるだけ無駄を省きたい。人々に共通な情緒を思い浮かべさせる「季語」、「季重なり」の忌避、「切れ字」ダブりの忌避、すべて言葉を省くためのテクニック。こうやって省いて削ってようやく残ったもの、それが俳句というものなのだ。
***
川柳と俳句の違
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(10)