駒ヶ根 /服部 剛
早朝
浴衣(ゆかた)のまま民宿の玄関を出ると
前方に鳥居があった
両脇の墓群の間に敷かれた石畳の道を歩き
賽銭箱に小銭を投げて手を合わす
高い木々の葉が茂る境内を抜けると
前方に広がる一面の田の間を
なだらかに上る畦道(あぜみち)は
アルプスの麓(ふもと)へと伸びていた
収穫を待つ全ての黄色い稲穂は
頭(こうべ)を丸く垂らしていた
歩き始めると
浴衣のはだけた胸に、風が涼しい
道の傍らの清流の音に
踵(かかと)を浮かべて
あの、遠い坂道の曲がり角から続く
そのまた先へ
朝顔の花びらは、明
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