東京駅 /服部 剛
 
押し寄せる人波を
私は独り、逆流する。 
東京駅の地下に蒸す夏。 
目の前の陽炎(かげろう)を掻き分けて。 

日常の流れに弾(はじ)かれて、立ち止まる。 
重い荷物(トランク)を床に降ろす。 


周囲には 
菓子屋の店員が 
陽気な大声を出している 

ホームへ続く階段を上る
人々は盆の里帰り

手を繋(つな)ぐ父と息子
背を丸め杖をつく老婆
軽快に歩く若い女

夏空から吹く風に 
先祖の霊が舞い降りる 
故郷の村に吸い寄せられ 
ホームへと続く階段の上へ
旅の鞄を背負う幾人もの後ろ姿が消える 


今、私は日本の中
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