盆踊りの夜 /服部 剛
葉しか話せな
かったが、内心は、A さんがいた頃とスタッフもすっかり変わり、
最近は疲れているというのが、言葉には表せない本音だった。だが、
あんなにも真剣な声で、人ごみの中を貫くような声で僕を呼んでく
れたことが、とても嬉しかった。
車椅子のお爺さんの所に戻り、この日最後の踊りの列に、車椅子
のお爺さんと共に加わった。六年前は至らずに、お爺さんのお役に
立てなかったが、力強く鳴り響く太鼓を中心に輪を作り、浴衣やハ
ッピ姿で踊る、夏の夜の夢の情景の中にお爺さんと共に身を置いて
いると、六年前の自分の愚かさを少し償えたような気がした。
最近の僕は、公私共に疲れ
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