盆踊りの夜 /服部 剛
に入って刻まれた焼きそばを片方の手で握ったフ
ォークで掬い、美味しそうに食べていた。
僕は自分が食べていたじゃがバタに塩をかけてもらう為、席を外
すと、人ごみの中から「服部君・・・!」と叫ぶ声に思わず振り向
いた。現在の部署に移動して来た頃自信を失っていた僕に、自分ら
しさを取り戻すよう育ててくれた、退職して二年近くになる当時の
主任の A さんの声だった。傍らに置かれたベビーカーの横で、大
きくなった三歳の女の子が、にっこり笑って立っていた。嬉しそう
に手を差し出した A さんと握手すると、繰り返し「がんばってる?」
と声をかけてくれた。僕は「はい」と頷き、片言の言葉し
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