盆踊りの夜 /服部 剛
盆踊りが始まり、職員が踊り始めると、車椅子のお爺さんは傍ら
に座る僕に、「踊っておいでよ」と言うので僕は列に加わり、炭坑
節や東京音頭等を踊った。踊り終えると、お爺さんが「芝生の上の
テーブルに行きたい」というので、車椅子をテーブルまで押して、
お爺さんに頼まれた焼き鳥と焼きそばとビールを買って来て、乾杯
して、美味しい一口目の苦味を、喉に流した。お爺さんは「部署が
変わってから、すっかり落ち着いたねぇ・・・」と言うので、僕は
少し苦笑いを浮かべながら、「あの頃は至らないところがあり、す
みませんでした。」と頭を下げた。笑顔を浮かべたお爺さんは、食
べやすいように皿に入
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