盆踊りの夜 /服部 剛
りの手伝いをしていた。六年前に挫折した特
養(重度障害者の介護)で、当時自分が至らずに、お役に立てなか
った思いがある、ムチ打ち・半身麻痺・糖尿病で、車椅子に乗った
お爺さんの担当であった。本音を言えば、当時の自分自身が至らな
かったと同時に、そのお爺さんの言葉に傷ついたこともあったので、
つい最近まで、廊下で顔を合わせることがあっても素直な気持で挨
拶できない自分がいた。今日は「担当になった以上、過去のことに
はこだわらず、共に過ごそう」という気持で、そのお爺さんの部屋
に迎えに行くと、黄色いハッピを着て車椅子に乗ったお爺さんは、
準備万端で部屋の出口で待っていた。
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