縁日を居酒屋で/海月
 
縁日の知らせを笛太鼓が告げる
心底に響く懐かしいメロディー
思い出す思い出に花を咲かし
酒の肴にする

最近の子供は金魚掬いを知らないだろう
と、飲み屋の親父はそんなことを呟き

串揚げを揚げて掬い僕に手渡す
それが何処かで金魚掬いに似ていた
口の中では熱さが踊りを舞う
金魚はビニール袋の中で泳ぐ

本当のリンゴ飴も知らないだろう
と、僕は親父に呟く

小さく赤く憂いに帯びた林檎
優しく飴の服を纏う
それはウエディングドレスに似ていて
甘く綺麗で切なく
結婚する娘の様に遠く離れてしまう

俺は幼少の頃に射的荒らしと呼ばれた

と、親父は黄色い歯を見せ
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