明日へ/服部 剛
 
夜が明けて 
窓から朝日が射し込むと 
目の前に 
猫背の暗い男が両腕を垂(た)らし
立っていた 

「 私ハ生キル事ニ疲レタ 
  アナタノ生霊 
  アナタガ誰カト浮カレル時モ 
  何時(イツ)モコノ部屋ノ隅デ膝ヲ抱エテ 
  座ッテイマス          」 

( 窓の外
( 木の枝から離れる枯葉 
( 一枚・・二枚・・と舞っていた

瞳の潤(うる)んだ弱気な男に近づいて 
肩にそっと手を置くと 
男は煙になって胸に入った 


日は暮れて 
真っ暗になった部屋のドアを開けると 
外には 只(ただ) 空白があり 
[次のページ]
戻る   Point(11)