小詩集【くじらヶ丘にラベンダーの雨】/千波 一也
{引用=一、くじらヶ丘
口に出してごらん
うるおい、と
その
やわらかな響きは
途方もなくひろい海の
すみからすみまで
満ち満ちてゆくようなものではない
干からびてしまう言葉は
いくらでもある
もの知りなふくろうが鳴かないよるに
海と陸とがむすばれ合う
つまりは
ふくろうとくじらとの
ゆめが繋がるということ
男はかつて女だった
月はかつて太陽だった
そんな
確かめようのない語りに
流されたくなってしまう
よるをたびたび
この足下にはくじらが眠る
その足下にも
向こうに
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