小詩集【くじらヶ丘にラベンダーの雨】/千波 一也
うにも
まさか、と
わらってみるのも
物思いにふけってみるのも
それぞれに
すてきないのちの不思議
分かつことに
良いもわるいもない
たとえばそれは風のぬくもり
適度につたわる
うるおい、のような
二、ラベンダーの雨
むらさきいろの約束は破られることなく
野の一面に揺れる香りは
けものの匂いに
けがされない
いろと香りがラベンダー
あまりに無知な
目と鼻の先で
しずかに夏は終わりへ向かい
かるい汗のしたたりに
ハンカチが浅く溺れている
あらゆる書物を
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(43)