ラスト・ショー/しゃしゃり
思う。
そしてぜんぜんなんの映画かもわからずに、その古い映画を見る。
かなしいラストシーンで映画は終わる。
まったく泣く気はしない。
傘をさして女は帰る。
それから数年が過ぎる。
女はまだひとりである。
男は生活の巣にがんじがらめになってゆき、
首筋にはもうキスをする余白さえない。
四万円の傘もやっぱりどこかでなくしてしまった。
結局四百円のビニール傘を買い換えてばかりいる。
仕事で地方の街によく出かけるようになり、
そうすると雨の夜にはなぜかひとりで映画を見たくなる。
ある地方のアーケードのはずれに、
やぶれたままで貼ってあるポスター。
女は、あ、と思う。
この映
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