「記憶の水溜りと祖父の手紙」 海月と雨宮一縷/海月
はない
それ程に似ているのだろう
物書きをしていた祖父の口癖は決まっていた
「どんなものでさえも、言葉を使えば表せる
人や犬や猫も目に見えないものでさえも表せる
ただ、一つ表せないものがる
それがなんだか分かるかい?
それは気持ちだよ
書かれたもの気持ちは私には分からない・・・」
そんな事を言っていた本人が書かれている
ミイラ取りがミイラになるように祖父も書かれている
祖父が言ったとおりに祖父の気持ちは分からない
そんな祖父と暮らしが軌道に数年が経った
歳は九十代に入っていた
完全に祖父の水は失いかけていた
新聞やテレビを見て少しでも生命を繋
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