「窓」/服部 剛
 
私は無人の都市を歩いていた 
 
見上げた無数の窓の一つから 
青い小鳥が堕ちて来た 

掌(てのひら)で受け止めた
痙攣(けいれん)する小鳥の青い羽は 
灰色へと変色し 
頭を垂らし 息絶えた 

呟(つぶや)きかけた鳴き声を
掌に残して 


  *


( 私の心の開いた窓から
( 飛翔する青い小鳥の亡霊は
( 暗天の空へ 

( 空から地上を見下ろす

( 杖を突いた老婆が独(ひと)り 
( 雲の上まで昇る果てない階段を
( ゆっくり 一段ずつ 上っていた 

( 無人の都市を彷徨(さまよ)う青年は 

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