屋上パンダ/紫乃
強く上下する
パンダは必死だった
う゛ーんう゛ーん
「飛んではいけない。飛んではいけないんだ。」
パンダを抱きしめながら叫ぶ
お前の故郷がここではなくても
それでも
う゛ーんう゛ーんう゛ーんう゛ーん
「飛んではいけないんだ。」
う゛ーんう゛ーんう゛ーんう゛ーん
パンダは必死だった
今日の空には誰かの放した風船さえ
飛んではいないけれど
う゛ーんう゛ーんう゛ーん
パンダはなおも飛ぼうとした
力強く 力強く
ひとりで見てきた夜空はどんなに広かったことだろう
パン
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