屋上パンダ/紫乃
パンダは僕をのせて力強く上下する
う゛ーんう゛ーんう゛ーんう゛ーんう゛ーんう゛ーんう゛ーんう゛ーんう゛ーんう゛ーん
やがてパンダは一番低いところで静かに止まった
灰色の瞳はなおも空を見ていた
しばらくの間抱きしめたままでいた僕は
パンダと同じ空を見た
そして僕は
落ち着かない心持ちのままパンダから離れる
しめった空気の中で
パンダは空を見ていた
ビルの屋上には強い風が吹いていた
やがて
見知らぬ男が100円をパンダに投入する
見知らぬ女が恥ずかしそうに笑いながらパンダに乗った
う゛ーんう゛ーんう゛ーんう゛ーん
う゛ーんう゛ーん
僕らは
もしかしたら本当は
空なんて飛べなかったのかも知れない
(飛んでは、いけない)
デパートでは閉店を告げるアナウンスが
マネキン達の間に響いていた
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