帰り道/
 
 坂を歩いて、月を見て、それに群がる雲を見た。幼い頃、ぼくはあの雲に乗れると思っていたし、そうするために飛べると、そう信じていた。大人になれば、スーパーヒーローなんかの面接みたいなのがあって、それに受かれば世界を救う英雄の一員になれると思っていた。安っぽいヒーローショーなんかを本当のそれと信じて疑わなかった。絶対にあぁなれると思っていた。それが歳を重ねるにつれてぼくは心まで老けていき、鏡に映ったぼくはそんな夢なんか忘れて現実に流されていた。今はそれが当たり前だと信じて生きていえる訳です。
 幼き頃の現実と今の現実はとてもかけ離れていて、たまに戸惑いを覚える。空を飛ぶことを諦めたからこそ飛べないの
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