中原中也記念館に行った日 〜後編〜/服部 剛
 
れるか分か
らないので、名残惜しい気持で中原中也記念館の前を通ると、記念
館の敷地内に展示されている何編もの詩が白い明かりにぼんやりと
照らされており、僕は吸い寄せられるように薄暗い敷地内に再び入
り、展示されている詩の前に立ち止まり、中也の詩心と対話してい
た。その中で印象に残った詩は、中也の子供が生まれて間もない頃、仕事で旅先の船に乗っていた中也が、可愛い息子は今頃どうしているかと幸せな気持で夜の海をみつめている詩と、その隣に展示されていた、幼くして亡くなった息子が、数ヶ月前には動物園で無邪気に猫の鳴き声をしていた姿を想い出している詩だった。展示されている詩の横に書かれた解説には、幼
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