中原中也記念館に行った日 〜前編〜/服部 剛
中也は、一体何を想い故郷の地に立っていたのだろうか。「帰郷」
には次のような言葉が綴られている。
今日は好い天気だ
縁の下では蜘蛛(くも)の巣が
心細さうに揺れてゐる
路傍の草影が
あどけない愁(かなし)みをする
心置なく泣かれよと
年増婦(としま)の低い声もする
蜘蛛の巣が揺れている描写に、時に人生の暗闇の中を心細く生き
て来た中原中也の姿が現れている気がする。そんな、人生に疲れて
しまった中也を迎えた故郷の山々や木々が、哀しみを共にするよう
に独りの詩人に語りかけている情景が「
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