小説「料理とワイン」/緑茶塵
意気だったかもしれない。
「驚きました」
「そう?」
「ここは会員制?」
「あなたにはまだ早いと思うわ」
私もそう思った。だからそれ以上何も言わなかった。
二本目のワインが空になり、ピアノの音だけが部屋に満ちていた。
やがてピアノの音が止ると、時計は十二時を回っていた。
私の上司は、何も言わずに立ち上がり、ピアノを弾いていた初老の男性に近寄っていく。
一言二言、何か話したようだったがすぐに戻ってきた。
「行きましょう。明日から大変だわ」
私は立ち上がって「何を話したんですか?」と問いかけた。
彼女は微笑むと「気にしないでいいのよ」そう言った。
「でましょう、今なら丁度終電
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